院長からのメッセージ

舌小帯短縮症 2011年08月01日(月)

   舌の裏側の真ん中で、口の底に向かって伸びる膜状のヒダを舌小帯(ぜつしょうたい)といいます。舌小帯は通常、舌の後方に付着していますが、人によってはやや前方(舌の先端部に近い所)に付着し、この場合は舌の前方と上下への動きが制限されます。この状態を舌小帯短縮症といいます。ほかに舌癒着症、舌硬直症、短舌症など、診療科によってさまざまな呼び名があります。

 舌小帯短縮症が著しいと、舌を前方に出しにくくなります。前歯(歯列)越えて出すことが難しく、舌で口のまわりを舐めることがうまくできません。無理して前に突き出そうとすると舌の先端がハート型にくびれることで、容易に診断できます。

 かつて、舌小帯短縮症が哺乳障害や将来の構音障害(発音の異常)の原因になると考えて、出生後早期に切離することを推奨した時代がありました。しかし実際に哺乳障害を経験することはほとんどありませんし、舌小帯は成長に伴って自然に切れてしまうか縮小してしまうため構音障害に至ることもほとんどありません。現在、これらの理由で乳幼児早期に手術を必要とする症例はきわめて稀です。舌小帯の手術適応は、構音障害が4〜5歳になっても改善しない場合、舌の動きが悪いことによる心理的負担が大きい場合など、舌小帯短縮の程度が著しい症例に限られます。ある程度まで成長してから手術を考慮しても遅すぎることはありません。

 ところが以前からごく一部の施設(耳鼻咽喉科)で、「舌癒着が呼吸障害を引き起こす。早期に手術治療しないと乳幼児突然死症候群(SIDS)の危険が増す」との主張により、生後間もない時期から全身麻酔下に手術が行われています。さらにごく一部の助産師・保健師が「舌小帯を切らないと突然死を起こす」「哺乳がうまくできず健やかに育たない」など、手術を積極的に勧めるコメントを発して、子育て中の母親を大きな育児不安に陥れています。

 この問題を重く見た日本小児科学会は広範囲の調査・文献検索と医学的な検討・検証を行い、「舌小帯と呼吸障害あるいはSIDSとの関連性は明らかでなく、突然死の予防を目的とする舌小帯手術の正当性は認められない」との結論を2001年に発表しました。SIDSの主因は睡眠時無呼吸からの覚醒反応の遅延であることが明らかにされつつあり、舌をはじめとする上気道の異常による突然死はごく例外的な別の病気と考えられます。

 私見を述べますと、哺乳障害や呼吸障害にはさまざまな原因があり、舌小帯の異常を極端に強調する "思想" にはまったく賛成できません。手術の適応はくれぐれも慎重に決めるべきです。もしも手術を勧められても直ちに同意するのではなく、信頼できるかかりつけの小児科医または耳鼻科医にセカンド・オピニオンを必ずお尋ねください。乳幼児は言葉を話せませんし、自分で物事を決めることができません。受け身の存在である乳幼児を不当な麻酔や手術という侵襲から守るために、また子育て中の母親に無用な恐怖と不安を抱かせないために、私たち小児科医は適切な医学情報を発信しなければならないと思います。
 

メディアと上手に付き合おう 2011年07月24日(日)

   現代の子どもたちは、テレビ、ビデオ・DVD、携帯電話、インターネット、携帯用ゲームなど、多種多様のメディアに取り囲まれて育っています。メディアは便利である反面、子どもの心身の発達を妨げる要素を数多く含んでいます。とくに “メディア漬け” の状態は、子どもにとって “百害あって一利なし” です。メディアとの上手な付き合い方を考えてみましょう。

 メディア漬けがもたらす弊害の第一は、親子の愛着形成が阻害されることです。携帯メールを操っていたりテレビ・ビデオを見たりしながら授乳している(あるいは食事を与えている)と、子どもは親の目や表情を見たり親の語りかけを聞いたりすることができず、親に対する愛着が少しも湧いてきません。授乳や食事は、親子が触れ合う大事な場です。親がまずメディアから距離を置き、わが子としっかり向き合うことが大切です。

 メディア漬けがもたらす弊害の第二は、言葉の育成が阻害されることです。子どもの言語能力は、親との双方向の関わり合いの中で発達します。子どもに分かりやすく話しかけ、子どもの発語をゆっくり聞いて応えるという、生身の体験が必要です。実体験を伴わない、映像メディアからの一方的な通行だけでは、言葉は決して得られません。コミュニケーション力もつきません。日本小児科学会の調査研究によると、言葉の遅れや表情の乏しさを抱える子どもの中に、メディア漬けの生活を止めた途端に語彙が著しく伸びた一群があります。また、子どもが4時間以上テレビを見ている家庭やテレビが8時間以上ついている家庭では、そうでない家庭に比べて言葉の出現が遅れるという調査結果も出ています。

 弊害の第三は、情緒や生命感覚にゆがみが生じることです。幼児期からの暴力映像への長時間の接触が後年の暴力的な行動や事件に関係することが、日本や米国の調査研究で明らかにされています。また、相手を殺しても簡単にリセットできる仮想の世界に長時間さらされていると、現実の世界での生命感覚がゆがんできます。ペットが死んだ時に、「パパ、電池を入れ替えてよ」と言った5歳児の話は、可笑しさではなく恐ろしさを感じます。

 弊害の第四は、体力や運動能力の低下です。メディア漬けは外遊びや身体を使った遊びの機会を奪います。第五は、生活リズムの乱れです。メディア漬けは遅寝遅起きを助長し、慢性時差ぼけの状態を作ります。第六は、感覚の異常です。人工的で過剰な音や光の中に置かれて育つと、静寂な環境下で落ち着くことができなくなります。以上の弊害は、とくに乳幼児期に注意すべき項目です。学童期以降は、携帯電話・インターネット・ゲーム依存症の問題が新たに出てきます。

 メディアへの適切な対応は、生まれた直後から(あるいは赤ちゃんがお腹の中にいる時から)始めなければなりません。日本小児科医会はメディア対策として、以下の五つを提言しています。いずれも重要な内容です。皆様のご家庭におかれましても、ぜひご検討ください。
 @ 2歳まではテレビ・ビデオの視聴を控えましょう。
 A 授乳中、食事中のテレビ・ビデオの視聴をやめましょう。
 B メディアに接触する総時間を制限しましょう。テレビは1日2時間まで(ゲームは1日30分まで)が目安です。
 C 子どもの部屋にテレビ・ビデオ・パソコンを置かないようにしましょう。
 D 保護者と子どもでメディアを上手に利用するルールを作りましょう。
 

ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン Q&A(改訂第二版) 2011年07月15日(金)

  本年1月に掲載したQ&Aの改訂版をお届けいたします。

<ヒブワクチン = アクトヒブ>
Q1 ヒブ(Hib)とはどんな細菌ですか?
A1 細菌性髄膜炎を起こすことがあります。日本では年間600人がヒブ髄膜炎にかかり、そのうちの20〜30人が死亡し、100人以上が重い後遺症(麻痺、けいれん、難聴、知能障害など)を残します。
Q2 新しいワクチンですか
A2 1980年代後半に実用化されています。現在100ヶ国以上で、国の責任下に無料で行う定期接種として子どもたちに行き渡っています。ワクチンの効果は劇的で、今やほとんどの先進国でヒブによる重い病気は見られなくなりました。これは後述する肺炎球菌も同様です。先進国から遅れること約20年、日本では2008年12月に導入されました。2011年2月から公費助成により無料で接種できます。
Q3 どんな副作用がありますか
A3 接種部位が赤く腫れたり、5〜10パーセントに発熱を生じたりします。重い副作用(強いアレルギー反応、痙攣など)はきわめて稀です。安全性の高いワクチンです。
Q4 何回接種しますか
A4  (1) 生後2ヶ月から6ヶ月まで;3回(4週以上の間隔)+ 約1年後に追加1回、 (2) 生後7ヶ月から11ヶ月まで;2回(4週以上の間隔)+約 1年後に追加1回、 (3) 1歳から4歳まで;1回のみ

<小児用肺炎球菌ワクチン = プレベナー>
Q1 肺炎球菌とはどんな細菌ですか?
A1 細菌性髄膜炎を起こすことがあります。日本では年間200人がかかり、そのうちの約20人が死亡し、60〜80人が重い後遺症を残します。ヒブ髄膜炎に比べて、頻度は低いですが、重症度は高いです。
Q2 新しいワクチンですか?
A2 小児用の肺炎球菌ワクチンは、米国で2000年から定期接種が始まりました。現在、世界100ヶ国以上で承認され、41ヶ国で定期接種に組み込まれています。先進国から遅れること10年、日本では2010年3月に導入されました。2011年2月から公費助成により無料で接種ができます。
Q3 どんな副作用がありますか?
A3 接種部位が赤く腫れたり、約10〜20%に38℃を超える発熱を生じたりしますが(ヒブワクチンより高い確率です)、重い副作用はきわめて稀です。安全性の高いワクチンです。
Q4 何回接種しますか?
A4 ヒブワクチンと若干異なります。(1) 生後2ヶ月から6ヶ月まで;3回(4週以上の間隔)+ 月齢12〜15ヶ月に追加1回、 (2) 生後7ヶ月から11ヶ月まで;2回(4週以上の間隔)+ 60日以上の間隔をおいて月齢12〜15ヶ月に追加1回、  (3) 1歳;2回(60日以上の間隔)、  (4) 2歳から9歳まで;1回(ただし、5歳以上には公費助成が適用されません。有料です)

<ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン 共通>
Q5  年少児の接種回数が多い理由は?
A5  ヒブや肺炎球菌を鼻粘膜に着けた子どものほとんどは、無症状のまま経過して5歳頃までに免疫を自然に獲得します(一般に肺炎球菌の方が遅れます)。しかしごく一部の子どもでは、これらの細菌が鼻粘膜から血液に入りこんで細菌性髄膜炎を起こします。年少児ほど免疫能が弱く、血液に侵入されやすい(髄膜炎を起こしやすい)状態です。実際、細菌性髄膜炎の70%は0歳児と1歳児です。したがって、できるだけ早い時期にワクチンを接種して免疫を獲得することが望まれます。
Q6  同時接種は可能ですか
A6  他のワクチンと同時に接種することが可能です。本数に制限はありません。たとえば三種混合とヒブと小児用肺炎球菌の三本同時接種が可能です。同時接種でワクチンの効果が減ることはなく、有害事象や副反応が増えることはありません。同時接種の最大の利点と目的は、子どもをヒブや肺炎球菌からできるだけ早期に守ることにあります。以上は日本小児科学会の公式声明でもあります。
 

日本脳炎ワクチン Q&A(改訂第九版) 2011年06月30日(木)

  A1 以前の日本脳炎ワクチン接種の積極的勧奨はなぜ中止されたのですか?
A1 平成16年10月に日本脳炎ワクチンを接種された14歳の女子が、その後に重度の急性散在性脳脊髄炎(ADEM)を発症し、翌年5月に「日本脳炎ワクチンと関連する可能性がある」と国に認定されたからです。しかし医学的には関連を疑問視する声が圧倒的です。
Q2 新しい日本脳炎ワクチンは以前の日本脳炎ワクチンと何が違いますか?
A2 製造の過程においてマウス脳を使用していない点です。ADEMを起こす確率は、理論上はゼロです。新しいワクチンへの切り替えは平成22年3月に完了しました。以前のワクチンは現在使われていません。
Q3 新しい日本脳炎ワクチンの副反応には何がありますか? 
A3 比較的多く見られる副反応として、発熱や接種部位の腫れ・痛みがあります。製造の初期段階でウシから採取した成分を使用していますが、ウシ由来の病原体による伝達性海綿状脳症(TSE)に感染したという報告は一例もありません。危険性はきわめて低いです。
Q4 わが国の日本脳炎の発生はどのような状況ですか?
A4 昭和42年までは年間1000人以上でしたが、予防接種の普及と生活環境の改善によって激減し、昭和47年以降は年間100人以下、平成4年以降は年間10人前後です。罹患者の多くは高齢者です。しかし厚労省が出した不適切な通達(前述)の後、接種機会を失った小児の罹患者が散見されるようになりました。また、夏季にブタと蚊の間で日本脳炎ウイルスの伝播が盛んに行われること(関東以南ではブタの約80%が感染しています)、東南アジアで毎年数万人規模の流行を生じていることから、過去の病気とは言えません。
Q5 日本脳炎の症状は?
A5 突然の高熱、頭痛、嘔吐、意識障害、けいれんなどを主徴とします。死亡率は20〜40%です。生存しても神経学的後遺症を高率に残します。脳炎を発症するのは、感染者の100〜1000人に1人です。脳炎以外では、無菌性髄膜炎も起こします。
Q6 人から人に感染しますか?
A6 日本脳炎ウイルスに感染したブタを蚊が吸血し、その蚊に人が刺されることで感染します。人から人に直接うつることはありません。
Q7 日本脳炎ワクチンを接種する必要はありますか?
A7 国(厚労省)は平成22年4月に接種の勧奨を再開しました。当院におきましても、ワクチンを接種して免疫を獲得することをお勧めいたします。
Q8 標準的な接種の方法は?
A8 第一期は3歳から7歳6ヶ月までに3回(初回は1〜4週間隔で2回、追加は初回終了後1年経過して1回)、第二期は9歳以上13歳未満で1回です。計4回の接種を要します。ただし接種機会を逸した方が大勢いるため、「20歳未満までに、計4回のうち残り回数を接種できる特例」が平成23年6月から開始されました。特例の対象は、平成7年6月1日から平成19年4月1日生まれの方です。第一期と第二期(3回目と4回目)の間隔はおおむね5年と定められていますが、20歳未満までに5年をあけられない場合は、より短い間隔(最低1週間)で接種できます。予診票が届かない年齢層もありますので、詳細は居住地の市役所にお問い合わせください。

追記(2012年11月12日)
Q9 日本脳炎ワクチンを接種した直後の死亡例が報告されました(2012年10月17日)
A9 亡くなった10歳男児は、致死性不整脈を起こしうる薬剤3種類(本来は併用してはならないもの)を服用していました。注射以外にもストレス、不安などあらゆる刺激が心肺停止の原因になり得ました。厚生労働省の専門家委員会において、日本脳炎ワクチン自体の問題ではないと判定されています。
 

細菌性髄膜炎を防ぐワクチン二種(改訂第七版) 2011年04月06日(水)

   細菌性髄膜炎を起こす原因菌の80〜90%がヒブと肺炎球菌です。ヒブと肺炎球菌を防ぐワクチンは、すでに諸外国では定期接種として広く普及しており、今や細菌性髄膜炎を見る機会はほとんどありません。二次的な効果として、ヒブと肺炎球菌による肺炎や中耳炎など重症疾患の発生も著しく減っています。さらに三次的な効果として、同居するお年寄りの肺炎も著しく減っています。子どもが肺炎にかからないため、お年寄りもうつされることがなくなるからです。一方、日本ではワクチンの認可が遅れていたため、今も年間に約千人の子どもが細菌性髄膜炎にかかり、その四分の一が尊い生命を失ったり重い後遺症に苦しんだりしています。欧米先進諸国に比べ、日本のワクチン政策は約十年から二十年遅れています。その間に救えたはずの生命は数百人にのぼります。近年ようやく厚生労働省は重い腰をあげ、平成20年12月にヒブワクチン(アクトヒブ)、平成22年2月に小児用肺炎球菌ワクチン(プレベナー)を認可しました。この二種類のワクチンを接種することで、細菌性髄膜炎の85%は予防できます。

 ワクチンの接種方式は、定期接種ではなく任意接種の扱いにとどまっています。任意接種では子どもを完全に守りきることはできません。任意接種は、その重要性が十分に理解されないことが難点です。親御さんの中には、「”定期接種” は必要なワクチンで、”任意接種” はどちらでもいいワクチン」と認識している方もいらっしゃるかもしれません。しかし決してそうではなく、必要かつ重要なワクチンであることは、諸外国がワクチンの力で細菌性髄膜炎を過去の病気へ追いやった事実から明らかです。現状では、細菌性髄膜炎の恐ろしさを知る方だけがワクチンの恩恵にあずかっています。情報の格差が生命の格差につながるのです。当クリニックは、ワクチンの重要性について声を大にして皆様にお伝えしたいと思います。

 今年3月、ヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンを接種した数日以内に死亡したケースが相次いで報告されました。しかし、厚生労働省が主催した専門家会議(3月24日)で、「ワクチン接種と死亡との間に直接的な明確な因果関係はない」「複数のワクチンを同時に接種しても、重い副反応の増加は報告されていない」と結論され、3月4日から中断されていた接種が4月1日に再開されました。死亡例の中には重い心臓病の方もおられましたし、乳幼児突然死症候群(SIDS)で亡くなられた方もいると聞きます。大勢の子どもたちがワクチンをいちどきに接種すると、どうしても他の病気(先天異常、感染症、SIDSなど)の紛れ込みを生じます。接種後30〜60分以内に重篤なアレルギー反応(アナフィラキシーショック)が起こった場合を除き、ワクチンが原因で死亡したと断定できるケースはまずありません。ワクチンと死亡との間に因果関係が無いことは、米国などにおける調査・研究ですでに結論が出ています。世界保健機構(WHO)を含む諸外国では、ワクチンの接種を中止することによる不利益(髄膜炎で亡くなる子どもが増えること)を考慮し、因果関係が証明されない限りワクチンを原因としません。今回の専門家会議の決定は、世界標準の考え方に従ったものといえます。

 ワクチンの効果と安全性(副反応)を冷静に比較検討した場合、ワクチンを接種することが子どもの健康に益することは間違いありません。ご自分の子どもが細菌性髄膜炎にかからないために、二種のワクチンの接種をぜひお勧めいたします。
 

乳幼児突然死症候群 2011年03月25日(金)

   乳幼児突然死症候群(SIDS、シッズと略称されます)をご存知でしょうか。一般にはあまり馴染みのない病名ですが、1歳未満の赤ちゃんを育てているか、お腹の中に赤ちゃんを身ごもっておられる親御さんに、ぜひ知っておいていただきたい病気の一つです。

 乳幼児突然死症候群(以下、SIDS)は、それまで元気だった赤ちゃんが、事故や窒息ではなく、眠っている間に突然死亡する病気です。生後2ヶ月から6ヶ月に多く、まれに1歳以上でも発症します。医学の進歩により感染症での死亡が減少するにつれて、SIDSは乳児の死亡原因の上位(第三位)を占めるようになりました。日本で現在、年間150〜200人の赤ちゃんが、SIDSにより小さな命を絶たれています。2〜3日に1人の頻度、6〜7千人に1人の割合です。

 先ごろ、ヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンの接種後に死亡する乳幼児の報告が相次ぎました。その中にはSIDSが原因で亡くなられた方も含まれていると推測されています。諸外国におけるワクチン接種後の死因では感染症とSIDSが大半を占めており、死亡とワクチンの間に明確な因果関係はないと結論されています。日本においても状況はほぼ同じと思われます。

 SIDSの主な原因の一つとして、呼吸中枢反射の異常があげられています。赤ちゃんは睡眠中に短時間の無呼吸や呼吸リズムの不整を起こすことがあります。通常は容易に回復しますが、もしも呼吸中枢が異変を検知できないと呼吸が抑えられたまま目が覚めず突然死に至ります。呼吸中枢の働きは脳内のセロトニンが調整しますが、SIDSを起こす子どもでは、この脳内のセロトニンが不足しているのではないかと考えられています。また、呼吸以外の原因では、致死性の不整脈やエネルギー代謝系の異常が、SIDSの状態を起こすことが知られています。急性心筋炎や急性脳炎などの重症感染症も、SIDSの状態を起こすと思われます。つまりSIDSは単一の病気ではなく、いくつかの病気の複合体といえましょう。

 原因の究明はまだ道半ばですが、予防については有効な手段があります。SIDSの危険性を低くするための留意点は三つです。@ 仰向けに寝かせる。うつぶせ寝の方が仰向け寝よりもSIDSの発症率が高いことが分かっています。うつぶせ寝が直ちにSIDSを起こすものではありませんが、医学上の理由でうつぶせ寝を勧められている場合のほかは、赤ちゃんの顔が見える仰向けに寝かせましょう。A タバコを吸わない。タバコはSIDS発生の大きな危険因子です。妊娠中および出生後に赤ちゃんの周囲でタバコを吸うと、SIDSの発症率が約4.7倍上昇します。これには妊婦・母親だけでなく身近な人の理解と協力も欠かせません。B できるだけ母乳で育てる。母乳栄養児の方が、人工栄養児よりもSIDSが起こりにくいことが示されています。しかし、人工乳がSIDSを引き起こすわけではなく、過度に不安をいだく必要はありません。

 日本でも世界各国でも、SIDSの危険因子を減らす運動が展開され、大きな成果をあげてきました。日本では10〜15年前まで年間死亡数が500人以上でしたが、SIDSの予防対策が強化された平成11年以降は着実に減少し、ここ数年は年間150人余りで推移しています。しかし、危険因子をなくしても、SIDSが完全になくなるわけではありません。SIDSには未解明の部分がたくさん残されています。現代の医学が突破しなければならない、大きな壁の一つといえましょう。

 追記(6月15日);2009年の人口動態統計によりますと、年間2556人の赤ちゃんが、1歳の誕生日を迎えることなく亡くなっています。乳幼児突然死症候群(SIDS)は、そのうちの157人を占めています。
 

子どもが風邪をひいた時の入浴 2011年02月27日(日)

   子どもが風邪をひいたら風呂に入れないというのは、長年にわたる「常識」でした。今でも国内の育児書の多くは、風邪の時の入浴をなるべく避けるように指導しています。しかし、風邪をひいた子どもの入浴を禁止することについて、明らかな医学的根拠は存在しません。それどころか、欧米諸国では風邪の時の入浴を積極的に推奨しています。どうして習慣がまったく逆になったのでしょうか。一体どちらが正しいのでしょうか。

 銭湯が一般的だった時代、熱い風呂に長く浸かって体力を消耗したり、寒い帰り道で湯冷めしたりして、風邪を悪化させるケースは少なくなかったと推測されます。入浴を禁じる理由はそのあたりにありそうです。しかし、住宅事情が良くなりほとんどの家庭が内湯を備えている現在、昔ながらの風習をそろそろ見直してもよい時期でしょう。

 風邪の時に入浴した子どもと入浴しなかった子どもの経過を比較した研究があります。その結果は、「入浴してもしなくても、症状が出ている期間や合併症に差異はない」というものでした。また別の研究では、風邪の時に入浴して症状が「悪くなった」と答えた人は2.2%だけで、ほとんどの人は「良くなった」(15.4%)または「変わらなかった」(82.4%)と答えています。つまり「入浴しても風邪の症状に悪い影響は及ばない」という結論でした。

 以上の研究成果ならびに自分自身の経験をもとに、当クリニックで親御さんにお伝えしている「風邪の時の入浴法」について解説いたします。
 (1) 高熱が出ていたり、強い悪寒がしたり、身体が重い(倦怠感が強い)状態では、入浴をお勧めしません。入浴は体力を消耗させるからです。
 (2) 熱がそれほど高くなく、状態が落ち着いていれば(食欲や機嫌が悪くなければ)、入浴しても構いません。ただし、熱い風呂・長風呂・風呂遊びを避けること、冬は脱衣所・浴室・居間または寝室をあらかじめ暖めておくこと、入浴後は湯冷めしないように素早く身体を拭くこと、などに留意してください。お湯は40℃以下が適温です。浴槽に浸からずシャワーで身体を洗い流すだけでも、皮膚の清潔は十分に保てます。腰から下だけ湯に浸かる半身浴もいいでしょう。洗髪は禁止しませんが、入浴後に温風で素早く髪を乾かしてあげましょう。
 (3) 子どもが入浴を嫌がるようならば、無理強いはいけません。浴槽に入らなくても、湯を浸したスポンジやタオルで身体を拭くだけで、汗や汚れが取れてさっぱりします。

 ちなみに、熱が出ている時に「身体をうんと暖めて汗をかかせて熱を下げる」という昔ながらの風習があります。しかしこの方法は完全な誤りです。汗をかくことで風邪が治るのではなく、風邪が治ったから汗が出て体温が下がるのです。したがって、風邪の時にわざと熱い風呂に入れて汗をかかせることは避けてください。
 

きれい好きが過ぎるとアレルギー !? 2010年11月17日(水)

   アレルギー疾患が増えています。最大の原因は環境の変化です。冷暖房完備の密閉式住宅(ダニの増加)、大気汚染、スギの植林政策、動物性蛋白を多くとる食生活は、すでによく知られた原因です。近年、これらの要素とは別に、乳幼児期に非衛生的環境にいたり感染症にかかったりするとアレルギー疾患にかかりにくい(逆にいうと、感染症にかかる機会が少ないとアレルギー疾患を発症しやすい)とする「衛生仮説」が注目を集めています。

 1989年に英国の疫学者Strachanは、兄や姉の人数が多いほど下の子が花粉症にかかる頻度が低いことを見いだし、幼少期に年長者から感染症(かぜ)をもらうことがアレルギー疾患の発症を抑えていると推論しました。衛生仮説の始まりです。Strachanの報告以後、(1) 生後6ヶ月までに保育園に預けられた子ども(風邪にかかる機会が多い)は、そうでない子どもより6歳以降の喘息の罹患率が低い、(2) 家畜を飼育する農家で生まれ育った子ども(細菌由来のエンドトキシンに曝される機会が多い)は、そうでない子どもより喘息の発症率が低いなど、衛生仮説を支持する調査報告が相次いでいます。

 人体の感染防御やアレルギーは、主にヘルパーT細胞という免疫系が関わります。ヘルパーT細胞には1型(Th1)と2型(Th2)があります。Th1は体内に侵入した病原体を撃退し、Th2はアレルギー反応を誘導します。同じヘルパーT細胞でも型により働きが異なるわけです。生まれたての赤ちゃんのヘルパーT細胞はTh1ともTh2ともつかぬ未熟な形状ですが、生後さまざまな微生物に曝されることでTh1が発達し、逆に無菌的状態ではTh2が発達し、次第にほどよいTh1/Th2バランスが形成されます。しかし衛生環境の改善により微生物からの刺激が減ると、Th1の発達が不十分なままTh2が優位になり、アレルギー疾患を発症しやすくなります。以上が衛生仮説の理屈です。とてもユニークで興味深い着想だと思います。ただし人間の免疫系にはTh1/Th2バランス以外にも複雑な仕組みがあり、衛生仮説はまだ完全に確立された理論ではありません。今後も十分な検証が必要です。

 たとえ衛生仮説が正しくても、衛生状態をわざと悪化させたり病気にわざとかかったりすることが推奨されるわけではありません。人類は病原体との闘いの中で自らの生存権を確保してきました。病原体に対する予防と治療の大切さは不変です。かかったら生命に危険が及ぶ病気(定期接種、任意接種に定められている感染症)についてはワクチンを積極的に接種すべきですし、手洗いや咳エチケットはしっかり守らなければなりません。

 衛生仮説を考慮すべき場面は、抗生物質の適正使用です。医療の現場であまりにも安易に抗生物質が処方されていること、それに伴って耐性菌が急激に増加していることは、以前のコラム(風邪と抗生物質。抗生物質の適正使用を)で紹介しました。抗生物質の乱用は、病原菌のみならず体内で共生する常在菌まで排除して、微生物による適度な刺激の機会を奪い、Th1の発達を妨げてしまう可能性があります。事実、乳児期に抗生物質を使いすぎると将来の喘息の危険が若干高まることが大規模疫学調査で明らかにされ、昨年の米国小児科学会誌に発表されました(Pediatrics 2009; 123, 1003)。衛生仮説の観点からも、抗生物質は必要と判断したらしっかり使う、そうでない時は使わない、という確固たる姿勢が必要と考えます。
 

細菌性髄膜炎を防ぐワクチン二種(改訂版) 2010年08月31日(火)

   細菌性髄膜炎を起こす原因菌の80〜90%がヒブと肺炎球菌です。ヒブと肺炎球菌を防ぐワクチンは、すでに諸外国で定期接種として広く普及しており、今や細菌性髄膜炎を見る機会はほとんどありません。さらに二次的な効果として、ヒブと肺炎球菌による菌血症や肺炎など重症疾患の発生も著しく減っています。一方、日本ではワクチンの認可が大幅に遅れているため、今でも年間に約千人の子どもが細菌性髄膜炎にかかり、その四分の一が尊い生命を失ったり重い後遺症に苦しんだりしています。欧米先進諸国に比べて、日本のワクチン政策は約十年から二十年遅れています。その間に救えたはずの生命はすでに数百人にのぼります。この酷い実態は、厚生労働省の無為無策による人災と言えましょう。日本は諸外国から「ワクチン貧国」と嘲笑される始末です。最近になってようやく厚生労働省は重い腰をあげ、2008年12月にヒブワクチン(アクトヒブ)、2010年2月に小児用肺炎球菌ワクチン(プレベナー)を認可しました。この二種類のワクチンを接種することで、細菌性髄膜炎の85%は予防できます。

 しかしワクチンの接種方式は、定期接種ではなく任意接種の扱いにとどまっています。任意接種では子どもを完全に守りきることはできません。任意接種の費用は、公費助成を導入している一部の自治体を除き、全額自己負担です。ワクチンの接種費用は安価ではありません。ヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンをそれぞれ4回ずつ接種すると、合計7万円近い支出を強いられます。今のままでは収入の格差が生命の格差につながる恐れがあります。大和市でも座間市でも、残念ながら公費助成はなされていません。昨年、大和市小児科医会の名前で公費助成の要望書を提出しましたが、財政難を理由に拒絶されました。今後も粘り強く折衝を続けてまいります。任意接種はまた、その重要性がなかなか理解されない難点があります。親御さんの多くは「定期接種は必要なワクチンで、任意接種はどちらでもいいワクチン」と認識されているのではないでしょうか。決してそうではなく、必要かつ重要なワクチンであることは、諸外国がワクチンの力で細菌性髄膜炎を過去の病気へと追いやった事実から明らかです。任意接種にとどまっているのは、国(厚生労働省)が単に怠慢で、子どもの健康を真剣に考えていないからです。現状では、細菌性髄膜炎の恐ろしさを知っている方だけがワクチンの恩恵にあずかっています。情報の格差が生命の格差につながっているのです。ヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンの定期接種化は、必ず為し遂げなければなりません。

 去る2010年3月23日、「細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会」の代表者の方々が国会を訪れて、ヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンの定期接種化を求める請願書を厚生労働大臣に提出しました。全国から集まった署名は4万筆を超えました。当クリニックも微力ながら署名活動に参加いたしました。しかし党利党略が渦巻く政治の混乱の中で、せっかくの請願書はまったく審議されることなく破棄されてしまいました。2007年4月以降、ワクチンの定期接種化を求める署名活動は計4回行なわれ、延べ20万筆が衆参両院議長と厚生労働省に届けられています。しかしながら、一度として真摯に取り合ってもらえたことはなく、いつも有耶無耶のうちに葬り去られています。いやしくも先進国と称される国々の中で、子どもの生命をここまで軽視する国が他にあるでしょうか。ヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンの定期接種化は、政治信条や思想を超えた、全国民に共通する緊急の課題であり悲願であると思います。今後新たな署名活動を行なう際には、皆様のご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。

 (2010年4月26日に初掲載。定期接種化を求める4回目の請願書が廃棄されたことを受けて改訂版を再掲載)
 

子どもの口と歯の健康 2010年08月25日(水)

   口や歯に関する質問を日常診療の中でしばしば受けます。小児科医として(歯科医に任せっきりにせず)口と歯の健康に積極的にかかわりたい、との思いでQ&A集を作りました。

Q1 舌の上全体が白くなって、拭いても取れません。治療は必要ですか?
A1 多くの場合、母乳やミルクの成分が固まって舌のシワに入り込んだものです。ときどきガーゼで拭いて清潔を保ちましょう。体調が良くない時、口の中に元々いるカンジダ(カビの一種)が増えて舌を覆うことがあります。カンジダに毒性はほとんどないので、心配はいりません。口の中を清潔にするだけで健康な舌に戻ります。
Q2 歯がなかなか生えてきません!?
A2 早い子は生後4ヶ月で、遅い子は1歳の誕生日を過ぎて初めての歯が生えます。平均すると生後8ヶ月です。1歳半で歯が生えていなければ、小児歯科の診察を受けましょう。
Q3 歯の生える順序に決まりはありますか?
A3 まず下の真ん中の2本、続いて上の真ん中の2本、その両脇 … の順序で生えますが、子どもによって順序が入れ替わることはよくあります。心配いりません。
Q4 前歯がねじれて生えていて、隙き間もあります。矯正は必要ですか?
A4 最初に生える下の2本の前歯は、しばしばねじれたり離れたりします。異常ではありません。また、乳歯には隙き間があるのが普通です。乳歯よりも大きい永久歯が生えるためのスペースが用意されているとお考えください。3歳以下で矯正することはありません。
Q5 噛み合わせが悪く、受け口のように見えます。矯正は必要ですか?
A5 奥歯がまだ生えていないか、生えていてもまだしっかり噛み合っていない時期は、下あごを前に突き出す動きがよくあります。異常ではありません。噛み合わせの治療は3歳を過ぎてから考えれば十分です。
A6 舌小帯短縮症あるいは舌癒着症といわれ、手術を勧められました!?
A6 「舌癒着を治さないと、呼吸障害や哺乳障害が治らない、突然死の危険もある」との触れ込みで手術を勧める医師の一派が存在します。しかし日本小児科学会は、治療の必要性と効果について医学的根拠がないことから手術の正当性を全否定しています。筆者(玉井)も日本小児科学会の立場に立ちます。もしも手術を勧められた場合、急いで同意せずに、信頼できる耳鼻咽喉科医または小児科医に見解(セカンド・オピニオン)をお尋ねください。
Q7 ときどき歯ぎしりをしますが、歯並びに影響はありませんか?
A7 前歯が数本生える時期に、上下の歯をこすり合わせて音を出すことはよくあります。将来の歯並びに影響ありませんので、そっと様子を見守るだけでよいでしょう。
Q8 歯磨きはいつから始めればいいですか?
A8 最初の歯が生えた時から始めましょう。歯の数が少ないうちは、ガーゼなどで歯の汚れを拭き取るだけで十分です。歯が上下8本くらい生えたら、歯ブラシを使うといいでしょう。
Q9 歯磨きを素直にさせてくれません!?
A9 子どもは口の中をゴシゴシこすられることを嫌がります。また、歯磨きの大切さをまだ理解できていません。歯磨きは楽しい雰囲気の中で遊びの延長として要領よく行いましょう。親子のスキンシップの一つと考えるとよいと思います。
Q10 上の前歯の間に帯状の盛り上がりがあります。これは何?
A10 上唇小帯といいます。傷つくと出血しやすいので、歯磨きの際に注意しましょう。もしも永久歯の歯並びに影響するようであれば、後々に切除を考慮します。
Q11 乳歯の虫歯を放っておいてはいけませんか?
A11 乳歯の虫歯の進行はとても早いです。放っておくと痛みや腫れを起こします。また、乳歯に虫歯が多かった子どもは、永久歯も虫歯になりやすいことが分かっています。
Q12 夜、寝る前に授乳したら、歯磨きをしないといけませんか?
A12 睡眠中は唾液があまり出ないので、歯についた糖分が残ってしまいます。虫歯の原因になるので歯磨きが必要です。
Q13 よだれの多さが気になります!?
A13 よだれは歯の生え始める頃から多くなり、2歳すぎに目立たなくなります。よだれが出なくなるのではなく、上手に飲み込めるようになるためです。よだれがなかなか止まない時は、鼻の病気(慢性鼻炎、アデノイド肥大など)がないか耳鼻咽喉科で診てもらいましょう。
Q14 乳歯がすべて生えそろうのは何歳ですか?
A14 個人差が大きいですが、大部分の子は3歳半までに20本すべてが生えそろいます。
Q15 転んだ時に歯をぶつけました。出血してグラグラしています!?
A15 すぐに小児歯科を受診しましょう。また、転んだ直後は大丈夫でも、数日後に歯が変色したり歯ぐきが腫れる時も、小児歯科に行くべきです。もしも歯が抜けてしまった場合、水道水でさっと洗って牛乳に浸けて小児歯科に急いで行ってください。元に戻せることがあります。
Q16 おしゃぶりは歯並びに影響しますか?
A16 2歳半から3歳を過ぎても使用を続けていると、歯並びと噛み合わせが悪くなります。おしゃぶりはできるだけ使用しない方がよいですが、もしも使用する場合でも、言葉を覚える1歳を過ぎたらおしゃぶりを常時使用しない、遅くとも2歳半までに使用を完全に中止する、の二点を必ず守ってください。
 


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